大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和62年(ワ)11324号 判決

① 事 件

原告

甲 野 花 子

右 親 権 者 母

甲 野 春 子

右訴訟代理人弁護士

斎 喜   要

被告

乙 野 一 郎

右訴訟代理人弁護士

丸 山 公 夫

反 田 一 富

主文

一  被告は原告に対し、金二八0万円及びこれに対する昭和六二年九月九日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告が原告に対し、昭和六二年九月から原告が成人に達するまで、毎月末日限り一か月金七万円の割合による養育料を支払う義務があることを確認する。

三  原告のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は被告の負担とする。

五  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、金三00万円及びこれに対する昭和六二年九月九日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  主文第二項同旨

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  第1、第3項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第一  当事者の主張

一  請求原因

1  被告と甲野春子(以下「春子」という。)は昭和五四年一一月二二日婚姻届出をし、昭和五五年七月三日、原告が出生した。

2  昭和五八年七月一一日、原告の親権者である春子と被告は、被告において原告が成人に達するまで、原告に対し養育料として毎月末日限り七万円を支払うほか特別費用を支払う旨約した。

3  被告と春子は昭和五八年七月一六日、離婚の届出をした。

4  原告は昭和五九年五月以降、特別費用として二0万円を出費した。

5  被告は2の合意に基づく支払義務を争っている。

6  よって、原告は被告に対し、右合意に基づき、昭和五九年五月分から昭和六二年八月分までの未払養育料と特別費用二0万円の合計三00万円及びこれに対する弁済期の後である昭和六二年九月九日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに被告が原告に対し、昭和六二年九月から原告が成人に達するまで、毎月末日限り一か月七万円宛の金員の支払義務があることの確認を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は否認する。

3  同3の事実は認める。

4  同4の事実は否認する。

5  同5は認める。

第三  証拠〈省略〉

理由

一請求原因1、3、5の各事実は当事者間に争いがない。

二〈証拠〉によれば、被告は春子及び原告とともに○○県○○市に居住し、同所で○○店を営業していたが、春子は被告が飲酒のうえ暴力をふるい、収入を乱費する等のことから被告との婚姻生活を継続できないとして、昭和五八年二月、△△県△△市所在の春子の両親方に原告を連れて別居したこと、春子は被告との離婚を決意し、同年六月ころ被告に離婚届用紙を送付し、被告はこれに署名捺印して返送したこと、そのころ、春子と被告の間では、原告は春子が養育し、離婚慰謝料、財産分与はないものとするが、被告において原告の養育料として毎月一0万円を負担することが話合われていたこと、同年七月一一日、被告、春子、原告のほか春子の父丙野二郎、被告の両親等が立会のうえ協議がなされ、被告において原告が成人に達するまで、原告に対し養育料として毎月末日限り七万円を支払う旨の合意がなされたこと、同月一六日、原告の親権者を春子として離婚の届出がなされ、春子が原告を養育してきたこと、被告は養育料として、原告名義の銀行預金口座に、同年七月一四日を初回として、同年八月二三日、同年九月二六日、同年一一月一四日、同年一二月一三日、同月三0日、昭和五九年二月三日、同年三月一日、同年四月二日、同年五月一四日に各七万円を振込送金したがその後は支払いをしなかったことが認められ、〈中略〉他にこの認定に反する証拠はない。

右事実によれば、特別費用支払いの点はともかく、原告が成人に達するまで、養育料として毎月末日限り七万円を支払う旨の合意の成立は明らかである。

三次に、原告主張の特別費用については、請求原因4の事実を確定的に認めるに足る証拠がないので右部分についての請求は理由がない。

四以上によれば、原告の本訴請求中、昭和五九年五月分から昭和六二年八月分までの未払養育料二八0万円及びこれに対する弁済期の後である昭和六二年九月九日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める請求並びに被告が原告に対し、昭和六二年九月から原告が成人に達するまで、毎月末日限り一か月七万円宛の養育料の支払義務があることの確認を求める請求はいずれも理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条但書を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官髙野 伸)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例